身の回りの生き物についてあれこれ書いてます。更新は1〜2週間に一度、週末です。詳しくはこちら。

2012年7月22日日曜日

巻きもの帳その2

ある春の日の事である。電車通勤の折、停車駅で
車窓から路肩の雑草を眺めていると、何か禍々しい
物体が目に入った。毛むくじゃらの、宇宙人的な
巨大な何かである。むむっ!?と思ってみて見ると、
果たしてそれは、オシダの芽吹きなのであった。
30cmぐらいの、ロゼット状になって開く直前の、
とぐろを巻く姿はかなりぎょっとさせられる。
(ちなみにオシダは、開いた後葉の裏に展開する
胞子嚢も、つぶつぶ嫌いにはかなりのインパクトだ)


オシダのように巻いた葉が開いていくものがある
いっぽう、いろんな所に登るために育ちながら
どんどん巻いていく植物も多い。つる植物である。
わたしの家には、ツゲの鉢植えがあるが、そこに
毎年性懲りも無く生えてくるヤマノイモがある。
初めてヤマノイモが生えてきてむかごを作ったときに
「これは食べられるのか?」と思って調べた事がある。
なぜなら、ヤマノイモには、オニドコロ、 ニガカシュウ
という似た植物があり、ヤマノイモ以外は毒なので
ある。
同定のポイントは

●オニドコロにはむかごが付かない。
●ヤマノイモはつるが左巻き。オニドコロは右巻き。
●ニガガシュウのむかごはちょっとでこぼこしていて、
 苦い。 
●ヤマノイモは葉を日に透かすと、網目状の葉脈が
 見える。オニドコロは見えない。ニガガシュウの
 葉脈は日に透かさなくても見える、横縞の縮緬状。

というわけで、我が家のこのつる植物はヤマノイモ
のようであった。
しかし、勝手に生えてきたものを、いくら調べて
みても、何となく食べる勇気が出ない。ひ弱な都会人
なのである。
また、巻いていると言えば、身近な生き物はカタツムリだ。
(そういえば、カタツムリってナニ?昆虫じゃないし。
と子供の頃思っていたが、彼らは「陸に棲む巻貝」なのだ
そうだ 。言われてみればまったくそのままだ。)
カタツムリの殻は、右巻きなのか、左巻きなのか?
答えは、両方あるのだが、右巻きのほうが圧倒的に
多いらしい。人間の右利きが多いのと何か関係あるの
だろうか、ないのだろうか、ないのだろう。
そういえば、人間のつむじだって右巻き左巻き両方
あって、右が多いと聞く。私も右だ。だからといって
思想は別に右とか左ではないが。 というか、右とか
左とか、人間は訳の分からない渦の中に自分を
巻きたがるメンドクサイ生き物であることよ。
長い物には巻かれない矜持とか、そういう事こそ
大事ではないか?

話をカタツムリに戻すと、沖縄や九州の一部には
巨大な、いかにも「海にいる奴らの仲間です」と
いう感じのカタツムリがいる。アフリカマイマイと
いう、外来種の大型カタツムリである。ネットで
検索すると、観光客のみなさんがうっかり手のひらに
乗っけて陽気に記念撮影などしているが、とんでも
ないのである。アフリカマイマイには広東住血線虫
という寄生虫がついていて、人間に感染すると死に
至ることもあるのである。くれぐれも触っては
イケマセン。
ちなみに、よく北半球と南半球では渦の巻き方が
どーのこーのでコリオリ力が...みたいな話があるが、
あれを読んでもさっぱり分からない。そもそも
南半球に行き水洗トイレの渦を眺める機会は
一生のうちにないのではないか。と少し寂しく
この文章の巻とするのであった。

2012年7月8日日曜日

巻きもの番外編

更新が滞ってしまっている。旅行に行っていたのである。
というわけで、また来週には更新しようと思っているの
だが、ひとつ旅行中にあった、生き物は関係ないが
螺旋的なエピソードというかミニ情報をお届けする。

パリのメトロでAbbesseseという駅がある。ここで
ホームを出るとエレベーターに乗るひとびとが溜まって
いる。上に上がるまでの階段がチト長いらしいのである。
そんなもの、まだ年寄りでもなし、お茶の子さいさい、
ヨヨイのヨイよ。と彼らを横目にさっそうと階段を
登ったのが大間違いだった。すいません、わたしが
悪かった。ごめんなさいごめんなさい。
無限に続く螺旋階段、壁にはかわいらしい絵がいっぱい
なのだが、その長さたるや地獄、壁画などまるで目に
入らない苦行である。もう途中でこれは永遠に出口に
出られないのではないかと絶望するぐらい長い。
(こう感じたのは中学校の修学旅行の時、龍泉洞の
垂直ハシゴで「もう登るのも降りるのもイヤ」と
泣きそうになって以来である)登りきったときには
乳酸いっぱい疲労困憊であった。もう年寄りなのである。
一緒に登っていたおばあさんと抱き合って、生きて
再び地上に出られた喜びを噛み締めたいぐらいであった。
Abbesseseに行かれる方はゆめゆめ軽い気持ちで
階段を登ることのなきよう、心に留め置いたほうが
いいのではないか。と、いらぬおせっかいをぜひして
おきたい。


↓チュイルリー公園にあった螺旋のオブジェ。
なにやら有機的である。

ではまた来週。