身の回りの生き物についてあれこれ書いてます。更新は1〜2週間に一度、週末です。詳しくはこちら。

2012年6月8日金曜日

なってみたいな夜の蝶

蛾はたいてい夜活動している。フランス語で蛾は
papillon nocturneと言う。(これは辞書で調べた
のだが、わたしのフランス語の先生のフランス人は
papillon de nuitと言っていた。どっちだ?たぶん、
どっちでもいいというか、フランス人はあまり虫に
興味が無いのかもしれない)いずれにしても「夜の蝶」
だ。わたしもイラストレーターでやっていけなくなったら
スナックさおりを開店して夜の蝶になるかもしれない。
(が、スナックさおりはママが飲んだくれて、つまみは
乾きものオンリーというひどい店である。やっぱり
やめたほうがいい)






話がそれたが、そうはいっても 昼間活動している
(姿を見る)蛾も結構いる。
特に目立つのが、ホタルガだ。特にこれからの時期、
ふらふらふらーと頼りなげに優雅に飛んでいるのを
見かける。
ホタルガはモードな蛾である。赤い帽子に黒地に白い
ラインの入った、いかしたドレスをまとっている。
普段わたしには全然区別がついてないが、ホタルガには
ホタルガとシロシタホタルガがいて、何が違うかというと
白いラインの入り方が違う。(↑左がホタルガで右が
シロシタホタルガである)一体なぜこんな微妙な
(言ってみれば別になくてもいいような)バリエー
ションが生まれるのか、教えてダーウィン先生という
気分になる。また、シロシタホタルガがホタルガと
違うのはもう一つ、幼虫の頃もモード感が強い水玉
模様である。
ホタルガの名前は、蛍に擬態しているかららしい。
頭が赤くて体が黒いからだ。では白いラインは、
光を表しているのだろうか?光らないのに光っている
ように見せるささやかな努力は、ファッションにおける
「痩せて見える服」などのコンセプトにも通じ、ますます
モード感が強い。

似せてみせる、といえば、昼間のスーパースターに似せて
昼の世界を謳歌している蛾もいる。 ジャコウアゲハに似た
アゲハモドキである。なぜジャコウアゲハに擬態している
のかというと、ジャコウアゲハは毒を持っているので、
似せればわたしも安泰だわ、鳥さん、わたしも食べら
れないのよ、そういうことでよろしくね。ということ
らしい。が、ちょっとお待ちよ、アゲハモドキの
うっかりものは、触覚まで蝶に似せるのを忘れている。
わたしは蛾です、の存在感ありありの櫛形の触覚のまま
なのだ。そう思って見ると、 シッポをつかまれてるのに
「わたしは蝶よ」とすましているような気がしてきて
なんだかちょっといじらしい。

活発に昼活動するのはオオスカシバやホウジャクである。
ハチドリみたいにホバリングして、同様に花の蜜を
吸っている。これは果たしてハチドリに擬態している
のだろうか?しかし日本にはハチドリはいない。
いないものを真似る事はないだろうから、他人のそら似、
ライフスタイルが似た者は形態も似るという事なの
だろうか?よく分からない。が、蜜を吸う姿は大変
かわいらしく、わたしは彼らが好きなのでアベリアや
ブッドレアをベランダで育てて来訪を待っている。

オオミズアオ もよく昼に見る。夜活動しているようだが、
昼も結構いろんな所で羽を休ませたり、あるいは飛んで
いるのも見かける。オオミズアオが飛んでいるところは
あれ?モンシロチョウにしちゃ大きいな、はんかち?
みたいな感じである。とまっていても、「あれ?こんな
ところにメモ貼ったっけ?」みたいな錯覚をする。
よく見ると、大変美しい。青みがかったオナガミズアオ
という種類もある。オオミズアオたちはホウジャクなど
と違い、口が無い。はかない命を恋に燃やして命を
終える。

と、派手な蛾にばかり目がいくが、マンションの壁には
「わたしは壁です」とへばりついてじっとしている、
ぜんぜん壁じゃなくて朽ち木模様のヨトウガやシャクガ
などもいるのであった。だいたい、蛾のほとんどは
木目っぽい。それを考えると、フランス語ではpapillion
 d'arbre(木)でもいいのではないか。
ごめんね、マンションが木目模様じゃなくて。と見るたび
ちょっと申し訳なく思う。 
あと数百年ぐらいしたら、マンションのタイル模様に
擬態した蛾も生まれるかもしれないが。

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